自民党・西村康稔経産相がクルーザーに女の子をはべらせて豪語「お前ら俺が総理になったら官邸に呼んだる!」

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話題沸騰中の泉房穂氏の新刊『政治はケンカだ!明石市長の12年』(聞き手=『朝日新聞政治部』の著者で政治ジャーナリストの鮫島浩)連載もいよいよ第5回。今回は「政党編」をお届けする。泉氏は市長在任12年間のあいだに、特定の政党の支持を受けたことは一度たりともなかった。そんなものがなくても、市民が味方についてくれたら選挙には勝てる、という信念があったからだ。

泉氏と古い付き合いがある西村康稔経産相の仰天エピソードも含む読みどころを同書から抜粋してお届けする。

連載『政治はケンカだ!』第5回後編

前編記事【なぜいまの自民党議員は小物ばかりなのか…元明石市長と元朝日新聞政治記者が語った「根本原因」】

「お前が人殺しても味方や」

鮫島 泉さんと明石市民の関係は、田中角栄と地元の支援者の関係にも似ています。

泉 たしかに4年前の出直し選挙のとき、メディアにも議会にも叩かれまくってる状況でしたが、自分としては心のどこかで「市民はわかってくれてる」という気持ちがあって。フタを開けてみれば、ビックリするくらいの票数で圧勝させてもらえた。角栄さんを熱く語っていたのと同じ熱意が、自分をもう一回市長に戻してくれたんだと思いました。

鮫島 私にとって印象的だったのは古賀誠さんです。古賀さんも小泉純一郎政権時代の抵抗勢力のドンで、完全なる悪玉と見られていたけど、地元の福岡では圧倒的に選挙が強かった。古賀さんが、「国会議員は人殺し以外どんな罪を暴かれても当選する力がないとダメだ」と言ってました(笑)。この人、何を言い出すんだと思ったけど、地元では絶大な人気があって、これこそが自民党の強みだと感じました。

泉 私、実は初めて市長選に出たときに、故郷である明石市二見町西二見の幼なじみや近所のオッチャン連中から、「ふさほ、覚えとけよ。ワシらはな、お前が人殺しても味方やからな」と言われました。

鮫島 殺しても大丈夫なんだ(笑)。

泉 ビックリして「いやいや、殺しませんから!」言いましたけどね。「お前は明石を捨てんと帰ってきて、ワシらのために立ち上がってくれた。それだけでワシら感動や。だからお前が人殺したって、ワシらは味方やから信じろ」って、ホンマに言われました。

そういった方々の応援のおかげで私が市長になっても、彼らは何の要求もしません。「お前が明石のため、我が村のために頑張ればそれで十分や」と。「その気持ちがワシらは嬉しいんや」という人たちだったから。本当にありがたかった。

泉 話を戻すと、小選挙区制の弊害が大きくて、かつての田中角栄や古賀誠のような足腰の強さを感じる政治家が、自民党も激減した。

ポスト安倍・明石市出身の国会議員

鮫島 そういえば泉さんと同じ明石市出身の西村康稔氏も、サラリーマン化した自民党議員の代表例に見えますが、いかがですか? 経産省出身の元エリート官僚で最大派閥の清和会に身を置き、ポスト安倍をうかがう一人ではありますが……。

泉 う~む、答えにくい固有名詞が出てきてしまいましたね(笑)。世代も近いですし、彼とは古い付き合いですが。結論から言うと、彼は強いですよ。弱くなった自民党の中で、例外的に強さを持った存在なんじゃないでしょうか。

彼と初めて会った時のことはいまでも忘れません。私が東大に入りたての18歳のころ、いろいろなサークルをハシゴしている時期がありました。もともと柔道をやっていたんですけど、『あしたのジョー』が好きだったからボクシングにも興味があって、短期間ボクシング部にも仮入部していた。

ボクシング部の1個上の先輩に彼がいて、同じ明石出身だったので、だいぶ話したんです。実は、当時から私は市民活動を始めてました。当時は家永教科書裁判の問題が話題になっていて、私も「侵略」を「進出」と教科書の表記を書き換えるのはおかしいと感じていた。それで、学内で一人立ち上がり、署名活動をしていました。

みんなに頼んで署名してもらったのですが、たった一人断られたのが1学年上のその先輩。その時に、「俺は将来総理になるから、こんな署名できん」と断られました。「え、この人、大学2年生から将来総理になると言っているんや!?」と思って、ホンマにビックリした。「こんな人、いるんや」と。

鮫島 同級生によると、灘高時代から「将来、総理大臣になる」と公言してたそうです(笑)。

泉 ただひたすら総理を目指す、あのあくなきエネルギーは、彼の中にずっとあるんでしょう。私が子どものときに、冷たい社会を優しくしたいと誓ったように。彼も早い段階で総理になることを誓ったんやろうね。

勝利への意志と迫力はすさまじい

鮫島 それこそ、田中角栄には成し遂げたいビジョンがありましたよね。でも西村さんの「総理になりたい」は、偉くなりたいってだけでしょう。「何をするために総理になりたいのか」という話を聞いたことがない。

泉 とはいえ、あのブレることのない権力への意欲は、すごい。私が司法試験に通った直後の30歳くらいのとき、明石の知人の紹介で、クルーズ船を借り切ったパーティに参加したことがありました。そこで、当時通産省の官僚だった彼と再会したのですが、あの時も度肝を抜かれた。官僚でありながらすでに殿様気分で、女の子をはべらせながら「お前ら俺が総理になったら官邸に呼んだるからな!」と言っていた。私、あの光景がいまだに忘れられない(笑)。

鮫島 ただの自惚れ屋さんじゃないですか。傲慢そのもの。

泉 あくなき上昇志向。

鮫島 党内での影響力もあるし、総理候補としてこれから名前が上がる可能性もある。全国の人は「同じ明石なのに、明石市民は泉市長を選び、西村代議士も選んでいる。明石ってどういうところなんだ?」と疑問に感じると思うんですよ。二人のキャラクターがあまりに違うから。これ、どう理解したらいいですか?

泉 そんなことよう私に聞きますね。さて、どう理解すると言われても……。

最近では稀に見る強い目的意識、つまり総理になるという明確な目標を持っている政治家であることは間違いない。そこから逆算して生きているという部分では、目的は全く違いますが、私と重なる部分もある。

彼は選挙対策も半端じゃありません。参院選のときは公明党を応援するんです。さらに維新とのパイプも太い。つまり、衆院選で他に有力な候補者が出ないように根回ししてるんです。実際、対抗馬は共産党だけだったりして、選挙前に、いわゆる有力者対策を終わらせてしまっている。勝つために、常に万全の選挙戦をやりきる。

あの辺の戦略と、勝利への意志、迫力は凄まじいです。政治家を引退したとはいえ、今後のこともありますので、彼についてはこれくらいで勘弁してください。

連載第1回から読む【「日本一の子育て政策」「暴言、毒舌」で知られた明石市長・泉房穂氏がいま「本音」で話すこと…「『人から嫌われたくない』なんて思ったことはない」】

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