ファーストリテイリングの柳井正会長は、「世界同一賃金」導入の狙いと、それに伴う収入格差の現実を語り、社員の適応力と変化を促しています。
ざっくりPOINT
「世界同一賃金」は国による賃金格差を是正する試み
中間層の減少と「年収100万円」リスクに言及
グローバル競争に適応できない社員は淘汰されるという厳しい現実
「世界同一賃金」は、社員のやる気を生むものなのか、はたまた「現場の疲弊」をさらに強めるものにならないのか。導入の狙いや、社員を酷使する「ブラック企業」との批判に対する見解を、ファーストリテイリングの柳井正会長兼社長に聞いた。
ユニクロ、「世界同一賃金」導入へ世界規模のふるい、成長か死か
――「世界同一賃金」を導入する狙いは何ですか。
「社員は、どこの国で働こうが同じ収益を上げていれば同じ賃金でというのが基本的な考え方だ。海外に出店するようになって以来、ずっと考えていた。新興国や途上国にも優秀な社員がいるのに、同じ会社にいても、国が違うから賃金が低いというのは、グローバルに事業を展開しようとする企業ではあり得ない」
――中国などに比べて賃金が高い日本は下方圧力がかかって、逆に低い国は賃金が上がるわけですか。
「日本の店長やパートより欧米の店長のほうがよほど高い。日本で賃下げをするのは考えていない。一方で途上国の賃金をいきなり欧米並みにはできない。それをどう平準化し、実質的に同じにするか、具体的な仕組みを検討している」
――いまの離職率が高いのはどう考えていますか。
「それはグローバル化の問題だ。10年前から社員にもいってきた。将来は、年収1億円か100万円に分かれて、中間層が減っていく。仕事を通じて付加価値がつけられないと、低賃金で働く途上国の人の賃金にフラット化するので、年収100万円のほうになっていくのは仕方がない」
――付加価値をつけられなかった人が退職する、場合によってはうつになったりすると。
「そういうことだと思う。日本人にとっては厳しいかもしれないけれど。でも海外の人は全部、頑張っているわけだ」
「僕が心配しているのは、途上国から海外に出稼ぎにでている人がいる、それも下働きの仕事で。グローバル競争のもとで、他国の人ができない付加価値を作り出せなかったら、日本人もそうやって働くしかなくなる。グローバル経済というのは『Grow or Die(グロウ・オア・ダイ)』(成長か、さもなければ死か)。非常にエキサイティングな時代だ。変わらなければ死ぬ、と社員にもいっている」 (引用はここまで)。
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グローバル企業の報酬体系が直面するジレンマ
「世界同一賃金」という考え方は、グローバル展開を進める企業にとって理想的な報酬制度に映るかもしれませんが、実現には複雑な課題が伴います。
たとえばアメリカのグローバル企業では、地域の物価や生活費を考慮した「地域調整給」を導入しており、全世界での一律賃金はほぼ例がありません。
現地の購買力と生活水準を無視した同一賃金は、現場のモチベーションを下げたり、逆にコスト負担を増加させたりするリスクがあります。
また、テクノロジーの進化により、単純作業はAIや機械に代替される中で、社員には高度な専門性や創造性が求められており、「年収100万円」という極端な表現が現実味を帯びてきています。
ユニクロが直面する労働環境の再構築
柳井会長の発言は、グローバル経済で生き残るには「成長」か「退場」しかないという現実を示しています。
ユニクロのような急成長企業では、成果主義が強調され、社員一人ひとりに高い成果と適応力が求められます。
しかし同時に、その厳しさが社員の精神的負担を高め、離職率の上昇やブラック企業との批判にもつながっています。
現代の労働環境においては、単に成果を求めるだけでなく、社員の健康や持続的なキャリア形成を支える制度設計も不可欠です。
ユニクロが提案する「世界同一賃金」が実現すれば、人材の公平性を保つ一歩となる一方で、その運用には繊細なバランスと長期的視点が求められます。
ユニクロは下着の仕上げに柔軟剤を使っていると聞いた時から、スッパリと縁を切りました。手持ちのユニクロ製品はポリエステルが多いのでこれも処分しました。
— mayu (@mayu4585) July 20, 2025