トルコ政府が、埼玉県川口市に住むクルド系トルコ人2名を最重要指名手配者に指定し、それぞれに400万トルコリラ(約1500万円)の懸賞金をかけていたことが明らかになりました。
対象とされているのは、ワッカス・チョーラクさんとメフメット・ユジェルさんの2名です。
両者は日本クルド文化協会に所属し、東京都北区や川口市で会社経営、文化・政治活動を行ってきました。
トルコ政府は、両者を非合法武装組織クルド労働者党(PKK)との関係者と見なしており、テロ関係者リストに基づいて国際手配を行っています。
特にチョーラクさんについては、過去に欧州クルド民族会議(KNK)で発言した履歴もあるとされます。
一方、日本の警察当局および政府は、現在まで両者の自由な活動を容認し、摘発などの対応を取っていません。
SNS上では、彼らが地域社会の中で日常生活を送っていることへの不安の声も上がっており、「普通に指名手配犯がご近所さんって怖くないですか?」といった意見も見られます。
詳細は動画
トルコの「テロリスト手配リスト」とは何か
トルコ政府は2015年以降、テロ対策強化の一環として「テロリスト手配リスト(Terör Arananlar)」を設け、国内外の対象者を色別に分類しています。
最も危険とされる「赤リスト」には最大1000万トルコリラの懸賞金がかけられており、今回の2人はその中でも「黄リスト」に該当し、400万トルコリラの懸賞金が設定されています。
トルコ政府はPKKを「テロ組織」として厳しく取り締まっており、欧米諸国や国際機関に対しても協力を要請しています。
一方で、クルド人団体の多くは人権活動や文化交流を目的として活動していると主張しており、国外では必ずしも「テロリスト」として扱われていないのが現実です。
日本においても、クルド人コミュニティは難民・庇護申請者を中心に存在しており、文化協会などを通じて平和的に地域と共存しています。
しかし、今回のような国際指名手配とされるケースが明るみに出たことで、地域住民の不安や国家間の外交的緊張につながる可能性も否定できません。
国際的懸賞金リストが示す、日本社会の課題
トルコ政府が川口市在住のクルド人2名を最重要指名手配し、懸賞金をかける事態は、日本にとっても重大な意味を持ちます。
日本はこれまで、難民・庇護申請者を比較的慎重に扱ってきた背景がありますが、今回のように「外国政府がテロ関係者とみなす人物」が国内で自由に活動している実態は、社会の安全保障政策や地域の共生モデルに一石を投じるものです。
同時に、日本の法制度上、トルコの指名手配が直ちに逮捕や送還につながるわけではありません。
人権保護の観点や証拠の国際的整合性が求められるため、政府や警察当局も慎重に動かざるを得ない状況です。
しかし、その間にも地域住民の間には不安や戸惑いが広がっており、透明性ある情報提供や対話の場が必要とされています。
国際政治の余波が地域社会にまで影響を及ぼす今、日本は「誰とどう共生するのか」という根本的な問いに直面しています。
安全と人権、多文化共生のバランスをどう取るかが、問われる時代となっています。