トランプ大統領、米国にフェンタニル送る中国人に「死刑が下されるだろう」

アメリカのトランプ大統領は、中国からフェンタニルを米国に供給する者に対して中国政府が死刑を適用すると発言し、強力な取り締まりと新法案の署名を通じた姿勢を明確にしました。

ざっくりPOINT
トランプ大統領、中国にフェンタニル密売人の死刑を示唆
習近平氏との2018年の合意を再提示する姿勢
新法でフェンタニルを永久に「スケジュールⅠ薬物」に指定

トランプ米大統領は、中国政府が米国に麻薬性鎮痛剤であるフェンタニルを流通させる中国人を死刑に処すことになると話した。

トランプ大統領は16日、ホワイトハウスで開かれたフェンタニル処罰強化法案書名式で「中国でフェンタニルを作り米国に送る人たちに死刑が執行されるだろう。私はそれがまもなく起きると考える」と明らかにした。

彼は中国に20%の関税を課したことに対し「私はこれを『ペナルティ』と呼ぶ。なぜなら中国が多くのフェンタニルを供給しているため。彼らは自分たちがしたことに対し数十億ドルの損害を支払っている」と話した。

トランプ大統領は第1次政権当時の2018年12月に中国の習近平国家主席との会談でフェンタニル規制強化を要求している。

米国の関税圧力を受けた習主席は全面的な貿易戦争を避けるためにトランプ大統領のさまざまな要求を受け入れ、そのひとつとしてフェンタニルを規制薬品に指定することで合意した。

これは米国にフェンタニルを販売する人は中国で法定最高刑に処せるという意味だと当時ホワイトハウスは説明した。

トランプ大統領のこの日の発言は、中国から米国に持ち込まれるフェンタニルを遮断するために当時と同じ合意を中国とまたするという意味と解釈される。

トランプ大統領はこれと関連し「しかしその後われわれは不正選挙を体験し、この制度に対しまったく知らない人が大統領になったため合意が白紙になった」と主張した。

トランプ大統領はこの日、「フェンタニルの致命的な密売をすべて中断せよ」という名称の法案に署名した。この法案はフェンタニル関連物質を規制薬品法(CSA)の「スケジュールI」規制薬品に永久指定する内容を含んでいる。

「スケジュールI」に分類された薬品は乱用の危険が非常に高く、医学的に認められた用途がなく、民事・刑事上の処罰と行政規制を受ける物質だ。この薬品を密売したり所持する場合、最小10年の懲役刑が宣告されることがある。

トランプ大統領は「われわれはこの法案に署名することによりフェンタニルという災難に見舞われたすべての家族に向け正義を実現する歴史的な一歩を踏み出した」と話した。

https://news.yahoo.co.jp/articles/1406c75c7fb77c33bc88b79297372aecf3597e55

フェンタニル危機の背景とアメリカ国内の対応
フェンタニルはモルヒネの50〜100倍ともされる強力な合成オピオイドで、アメリカでは薬物過剰摂取による死者の主要因となっています。特に2010年代後半からは中国やメキシコを経由して流入し、年間数万人の命を奪う深刻な社会問題に発展しました。

アメリカでは2021年の時点で、薬物過剰摂取による死者が年間10万人を超え、そのうち6割以上がフェンタニル関連でした。トランプ政権下でもフェンタニル問題への対応は優先課題とされ、中国政府に対する圧力や国内法整備を進めてきました。

今回の発言と法案署名は、再び厳格な取り締まり姿勢を示す意図とされ、2024年の選挙をにらんだ対中強硬姿勢の一環とも見られています。フェンタニル流入阻止は超党派的な支持もあり、再選戦略の一柱に位置づけられる可能性があります。

フェンタニル問題の行方と国際的な影響
フェンタニルのような強力な薬物の流通には、国家を越える規制協力と厳格な司法執行が不可欠です。トランプ大統領の強硬な言動は、国内における薬物撲滅の意志を示す一方で、中国との外交関係には緊張をもたらすリスクも孕んでいます。

アメリカが中国に対して「死刑による制裁」を要求するという構図は、人権問題や法の独立性を巡る議論を招く可能性があり、国際世論の中での評価も分かれるでしょう。ただし、アメリカ国内では「子どもたちの命を守る」といった強いメッセージとして一定の支持を集めています。

今後、フェンタニルに対する国際的な流通網の監視や、各国の法制度を超えた連携が進むのか。今回の法案署名と発言は、その分水嶺となる可能性があります。薬物危機に立ち向かう中で、トランプ政権は再び“強さ”を外交と内政の柱に据えようとしています。