トランプ政権、新たな安全保障戦略を発表 中国への農地売却禁止へ 

トランプ政権は、米軍基地周辺の農地取得を含め、中国など敵対国によるアメリカ農業への関与を排除する新たな安全保障戦略を発表しました。

ざっくりPOINT
中国資本の土地取得に全米で警戒感
農業研究へのスパイ活動を警戒
既存所有地の「回収」措置も視野に

トランプ政権、中国への農地売却禁止へ 米軍基地周辺の取得阻止 農業安保行動計画を発表

【ワシントン=坂本一之】トランプ米政権は8日、中国への農地売却などを禁じる「農業安全保障行動計画」を発表した。米国の農業における敵対勢力の影響力拡大を阻止し、米軍基地周辺の農地が中国などに渡ることを防ぐ。連邦議会や州議会と連携し法整備を進める。

ロリンズ農務長官やヘグセス国防長官らは8日、記者会見を開き、中国やロシア、イラン、北朝鮮といった外国の敵対勢力から米国の農業を保護すると発表した。中国などが米国で農地を取得することを禁止する立法措置や、米軍基地周辺にある農地の所有者の調査などを進める。

ロリンズ氏は、敵対勢力が米国で「農地を購入し、農業研究(の成果)を盗み、農業システムに脆弱(ぜいじゃく)性を生み出している」と指摘し、国家の脅威であることを強調した。

農業安全保障行動計画には、米軍基地周辺の農地が中国人らに購入されたことを示す地図も盛り込んだ。ロリンズ氏は8日にホワイトハウスで開かれた閣議で、報道陣を前に同地図を紹介。基地周辺の農地が次々と中国側に買われている状況について「重大な安全保障上の問題だ」と述べた。

トランプ政権は、すでに中国側が所有者となっている農地などについても「回収」することを可能にする措置を講じる方針だ。

https://www.sankei.com/article/20250709-FBBQ3GHGSRN3VDIWSKJVTAZEIA/

米中経済対立が土地問題にも波及
近年、アメリカ各地で中国企業による土地取得が相次いでおり、特に農地や軍事施設周辺での購入に対して強い警戒感が高まっています。

2021年には中国企業がノースダコタ州で農地を購入し、近隣に空軍基地があることが問題視されました。

連邦議会や複数の州では、中国を含む外国政府や関連企業による土地取得を制限する法案が続々と提出され、テキサスやフロリダなどでは既に可決されています。

農業は国家のインフラであり、食料安全保障の根幹を成す分野です。

情報収集やインフラ攪乱といったリスクを未然に防ぐために、土地の安全保障が新たな焦点となっています。

国家安全保障の再定義と今後の展望
従来、国家安全保障といえば軍事やテロ対策が中心でしたが、現在は経済活動や不動産の所有にまでその定義が拡大しています。

農業や土地という一見非軍事的な資源が、情報収集や経済的圧力の手段として使われる可能性があることから、米国では国土防衛の観点から対応が進んでいます。

中国との対立が深まる中、アメリカ国内では政府と民間が連携し、資本の流入経路を可視化する取り組みが求められています。

今後は、農地売却にとどまらず、水資源や通信インフラなどの所有権管理にも規制が拡大する可能性があり、グローバルな投資環境にも影響を及ぼす見通しです。