在日台湾人がSNSで排外的対応を訴えた投稿が波紋を広げ、日本社会における外国人排斥の風潮が議論されています。
ざっくりPOINT
外国語を話すだけで拒絶される事例も
政治家やメディアの発信が影響との指摘
観光・労働で支える外国人を排除する矛盾
2025年6月30日、台湾メディアの東森新聞は、「日本で外国人を排斥する風潮が強まっている」という在日台湾人の主張が議論を呼んでいると報じた。
同記事によると、ある日本在住の台湾人がこのほどSNSのThreads(スレッズ)で、「日本の友人と飲食店で食事中、友人が私に中国語を学びたいと言ってきて、ちょっと中国語を話したら、私が外国人であることに気づいた店主から突然『早く出ていってもらえますか』と言われた。他の店員は謝っていたが、今の日本における外国人排斥の雰囲気には憂慮を覚える」と書き込んだという。
また、この台湾人は「メディアや過激な政治家による長期的な操作によって、(日本で)毎日敵意を感じるようになった」とし、今回のトラブルが偶発的ではないとの考えを示すとともに、「正規のメディアが外国人を誹謗中傷していることが一番の苦痛だ」と吐露した。
この書き込みをめぐってはユーザー間で盛んな議論が起き、さまざまな意見が寄せられた。このうち、日本生活が長いユーザーは「差別自体は前からあり、これまでは見えなかっただけ。ここ2年は円安、不景気が続き、日本人の生活のストレスが増大して外国人がそのはけ口になっている。一部外国人のモラルのない行為に加え、メディアの報道、政治家の扇動によって排外的な日本人がますます増えている」とコメントした。また、別のユーザーからは外国人排斥の最も根本的な原因は「年々質が低下している大量の観光客」であるとの指摘も出たという。
記事は、「観光で生計を立てる必要がある日本人が、日本観光ブームに疲弊している側面は確かにある」とし、これに経済の停滞や新型コロナ後の社会の変化、外国人労働者の増加などの要素が加わって、排外的な言論がSNS上で急速に広まっているのだと解説した。また、最初の書き込みを行った台湾人が「製造業の縮小、深刻な高齢化、関税戦争といった背景の中で、日本の過激な排外主義が加速すれば、さらなる経済危機が発生する可能性がある」と懸念を示したことに触れた上で、「観光業や情報技術、不動産などの産業で外国人の参加が欠かせない状況になっている現在の日本における排外主義は『わが身を傷つける』行為になるため、日本社会はこの問題をおざなりにすることはできない」との見方を示した。(編集・翻訳/川尻)
https://www.recordchina.co.jp/b955914-s25-c30-d0193.html
多様性のなかの共存に向けて
今の日本社会は、観光や労働力として外国人を必要とする一方で、文化や言語の違いによる摩擦が生まれやすい時期にあります。
一部に過敏な反応や不適切な対応が見られることも事実ですが、それは社会が変化に対応していく過程のひとつとも考えられます。
重要なのは、個々の事例をもとに相手を一括りにするのではなく、お互いの立場や背景を理解し合おうとする姿勢です。
地域や行政、企業などの現場では、多文化共生に向けた取り組みも進みつつあり、制度的なサポートも少しずつ整ってきています。
今後は、過度な対立ではなく「安心できる共生」のあり方を冷静に模索していくことが求められます。
背景にある生活不安と文化摩擦
近年の日本では、円安や物価上昇、長引く経済停滞などの影響で、生活の余裕を失っている層が少なくありません。
こうした環境下で、文化的な違いやマナーのずれが敏感に受け止められることもあります。
外国人観光客や在留者の急増により、一部地域では混雑や騒音、ごみなどの問題が地元住民の不満につながることもあります。
また、政治家やメディアの発信が極端な意見を拡散することで、必要以上に警戒感が高まってしまう側面もあります。
ただし、すべての日本人が排外的というわけではなく、多くの人が丁寧に対応している事例も日常的に存在しています。
社会全体として、理解と秩序の両立を模索している段階といえます。