石破茂首相は夏の参院選公約に、全国民に一律2万円の給付を盛り込み、子どもと住民税非課税世帯にはさらに2万円を加算すると表明しました。
ざっくりPOINT
国民全体に2万円給付、子ども・非課税世帯に4万円
財源は2024年度税収の上振れ分、赤字国債には依存せず
給付迅速化へマイナンバーと口座紐づけの活用を検討
石破茂首相(自民党総裁)は13日、物価高対策として夏の参院選の自民党の公約に国民1人あたり2万円の給付を盛り込むと表明した。子どもと住民税非課税世帯の大人には1人2万円を加算する。首相官邸で記者団の取材に答えた。
首相は「物価高対応は賃上げが基本だが、物価上昇を上回るまでの対応も必要だ」と主張した。そのうえで党幹部に「決してばらまきではなく、本当に困っている方々に重点をおいた給付金を公約に盛り込むよう検討を指示した」と語った。
給付金額の根拠として「家計調査をもとに、食品にかかる消費税負担額を念頭におき、物価高の影響が大きい子育て世帯と低所得者世帯の負担に特に配慮した」と話した。給付の実施時期については「今後適切に判断する」と述べるにとどめた。
財源に関し「税収動向などを見極めながら適切に確保し、赤字国債に依存しない」と強調した。2024年度の税収の上振れ分を充てる方針だ。
予算規模は「粗々の試算で3兆円台半ばだ。今後さらに精査する」と説明した。迅速な給付と自治体の事務負担の軽減に向け、マイナンバーと預貯金口座がひも付いた「公金受取口座」の活用も検討する。
立憲民主党など野党が掲げる消費税減税は時間やコストがかかり、高額所得者への恩恵が大きいと指摘した。「決して適切であると考えていない」と語った。
首相は同日午後、自民党本部で森山裕幹事長や小野寺五典政調会長、木原誠二選対委員長、松山政司参院幹事長と協議した。参院選の公約に給付を盛り込む方針を確認した。
https://www.nikkei.com/article/DGXZQOUA135OW0T10C25A6000000/
選挙公約としての給付策と財政政策のバランス
この政策は、物価高が続く中、選挙前に即効性のある支援を有権者に提示したいという政府の意図が明白です。
給付対象を全国民に広げつつ、子どもや非課税世帯に上乗せすることで「困っている層」に重点を置いた形にしています。
背景には、野党が消費税減税を公約に掲げる中、与党が「赤字国債を使わず、税収増分で対応」という姿勢を示し、財政規律と柔軟な支援の両立を図ろうとする狙いがあります。
一方で、自民党内外には「これは単なる選挙対策で、将来世代への負担になるのでは」といった慎重論も根強く存在します。
こうした声に対し、首相は「決してばらまきではない」と明言し、必要性を強調しています。
公約実現に向けた課題と今後の展望
給付金の「効果」を巡っては、家計への実効性や消費への波及効果の検証が求められます。
2020年の10万円給付では多くが貯蓄に回ったとの分析もあり、今回の一律給付でも同様の懸念があります。
また、迅速な給付には「公金受取口座」の普及が不可欠ですが、高齢者層を中心に登録が進んでいない地域もあり、行政側の体制整備も課題です。
さらに、財源の一部を税収増に頼る方針は、景気後退局面では再調整が必要になる可能性もあり、持続性のある制度設計が問われます。
選挙結果次第では、政策の見直しや優先順位の変化もあり得るため、国民の反応と今後の議論の行方が注目されます。