生活保護受給者の多くが物価高騰の中で生活の厳しさを実感し、後ろめたさを抱えつつも支給額の増額など制度の改善を求めています。
ざっくりPOINT
「少し後ろめたいが仕方ない」が6割超
食事や光熱費、医療費などで我慢の生活
支給額の増額や制度の柔軟化を望む声も
SNSにあふれる“自己責任論”と分断のリアル
生活保護をめぐる議論がX上で活発に行われる中、「働け」といった投稿が多く見られます。
中には「物価高なのは理解するが、支給金でパチンコやタバコに使う人がいるなら、現物支給にすべき」「我慢すればいい」「支給はSuicaのように用途を限定すべき」など、支給のあり方や使途制限を求める声もありました。
また、「俺たちは汗水流して働いてるのに」といった不満から、不正受給の取り締まり強化を訴える意見も散見され、生活保護制度そのものに対する誤解や偏見が根強く存在している現状が浮き彫りになっています。
こうした反応は、経済格差の広がりとともに、社会の中にある“線引き意識”を際立たせています。
【生活保護】「後ろめたい…でも仕方ない」 受給者たちの “心情”、 本当は「金額を上げてほしい」…ホンネも
全国の552人にアンケート調査
生活費のイメージ
食料品などをはじめとする物価高騰が止まらず、さらに電気・ガス料金は5月請求分から値上げ。冷房が必須となる季節を前に、とりわけ生活困窮者にはいっそう厳しい暮らしが迫られそうです。
【画像】「金額を上げて…」 これが受給者たち 《ホンネ》 の数々です(画像18枚)
携帯電話を持っておらず日常生活に困難をきたす人などを対象に「誰でもスマホ」サービスを提供するアーラリンクがこのたび、「生活保護に関する意識・実態調査」を実施し、結果を発表しました。同サービス利用者の過半数が生活保護受給者といいます。
調査は2025年5月、生活保護を受給している全国の「誰でもスマホ」利用者を対象にウェブ上で行われたもの。552人から回答を得ました。
生活保護の受給に対する気持ちは「少し後ろめたいが仕方ない」が最も多い60.7%。「当然の権利だと思う」は21.4%、「恥ずかしいと思う」は12.1%でした。経済的な理由で諦めたこと(複数回答)として最も多かったのは「十分な食事をとること」(67.2%)。以下、「携帯電話やスマホの契約・維持」「誰かに相談すること」「光熱費を節約し過ぎて健康に影響が出た」「病院へ行くこと」などが上位に並んでいます。
日本の生活保護制度に対する評価は、「非常に良いと思う」19.0%、「まあ良いと思う」29.0%、「どちらとも言えない」25.0%、「あまり良いとは思わない」19.6%、「全く良いとは思わない」7.4%。
評価できる点は、「病院代が無料になる、家から病院までの交通費が支給される、水道代が免除される、ごみ袋が支給される、住民票等の必要な書類が無料で取れる」(東京都、30代女性)、「最後の砦というか、生活が困窮しているときのセーフティーネット」(神奈川県、50代男性)など。
一方、制度への“不満”も見られました。改善してほしい点として挙げられたのは、「物価高騰が続き食材が買えないので、経済状況に合わせ支給金や物資を提供してほしい」(東京都、30代女性)、「病気などで働けない人と個人的な理由で働かない人の保護費の金額を考えてほしい」(東京都、50代女性)、「車の使用また保持がダメなのは、不便な所に住んでいる人は自分も含めて大変な思いをしている。特に冬」(北海道、60代男性)「受給の金額を上げてほしい。整骨院、接骨院を受診できるようにしてほしい」(神奈川県、40代男性)などでした。
誰しも思いがけず必要になるかもしれないのが生活保護制度です。実際に利用している人たちの声を知っておくのは有用なのではないでしょうか。
https://news.yahoo.co.jp/articles/20b7be6b2adfe4e7e2e5222b243245b8444dd11d
制度の再評価と“分断”を防ぐために
生活保護制度は、生存権を保障するための最後のセーフティーネットであり、必要な人が安心して利用できるべき制度です。
しかし、SNSでは支援を受けることに対して「ズルい」「甘え」などの意識が根強く、制度そのものへの信頼や理解が浸透していない現実があります。
これは支援制度を適切に機能させる上で大きな障壁です。
一方、誤解を生まないためには、制度の透明性向上や不正防止の強化が求められます。
また、正確な情報発信と利用者の声の可視化が、受給者と非受給者との間の相互理解を深める鍵となります。
真に必要な人が後ろめたさなく支援を受けられる社会を目指すには、社会全体の価値観のアップデートと、対話の土壌作りが不可欠です。