東京都心の不動産市場に、かつてない不穏な空気が漂っている。長らく右肩上がりを続けてきた都心3区(千代田区・中央区・港区)のマンション価格だが、2025年秋を境に急激なブレーキがかかっている。
- 都心3区のマンション成約件数が繁忙期にもかかわらず前年比14%減と大幅に落ち込んでいる
- 売出価格は高止まりする一方、実需との乖離が拡大し「転売バブル」崩壊の懸念が強まっている
- 仲介業者の「物上げ」競争が価格を押し上げる歪な構造が、市場の停滞を招いている
2026年3月時点の中古成約㎡単価は238万円。半年前と比較しても1%の上昇にとどまり、上昇基調は事実上の停止状態にある。しかし、2年前と比較すれば42%もの高騰を記録しており、市場は「高止まり」か「崩壊」かの瀬戸際に立たされている。
特に深刻なのは、価格そのものよりも成約件数の減少だ。不動産業界にとって最大の繁忙期である2026年1月から3月にかけて、都心3区の成約件数は前年同期比で14%も減少した。

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「一人負け」の都心3区、成約件数14%減の衝撃
首都圏全体で見れば同期間の成約件数は2%増となっている。この対照的な数字は、都心3区が市場から孤立し、「一人負け」の状況に陥っていることを如実に示している。
SNS上でも「買えるわけがない」「夜になっても火が灯らないマンションが増えた」といった悲鳴や冷ややかな視線が飛び交い、実需と価格の乖離はもはや隠しようのないレベルに達している。
なぜ、売れない物件の価格が下がらないのか。その背景には、不動産仲介業界特有の「物上げ」という商習慣が深く関わっている。
仲介会社にとって、売却依頼を受ける「売り仲介」は、購入希望者を探す「買い仲介」よりも圧倒的に利益を上げやすい。専任媒介契約を結べば、成約時の手数料収入がほぼ確実になるからだ。
このため、仲介会社は売主に対し「顧客の想像以上の高値で売りましょう」と甘い言葉を投げかける。相場が上昇傾向にある局面では、この戦略が功を奏し、売出価格だけが実勢を無視して吊り上げられていく。
業界用語で「物上げ」と呼ばれるこの行為は、成約事例が1億円であっても「1.4億円で売れる」といった楽観的な査定を誘発する。これが、市場の歪みを加速させる一因となっている。
「物上げ」が生む歪な価格高騰と市場の限界
しかし、買い手はすでに冷静だ。長引く実質賃金の低下と、あまりに高騰した物件価格を前に、消費者は購入を見送る選択をしている。結果として、検索サイトには「売れない在庫」が積み上がっていく。
1989年の日本バブルや2008年の米国バブル末期と酷似した兆候を指摘する声も増えており、市場関係者の間では「転売不動産バブル」の崩壊を危惧する声が日増しに強まっている。
今後、この高止まりした価格が調整局面に入るのか、それともさらなる停滞が続くのか。都心マンション市場は、投資マネー主導の狂騒から、現実的な価格修正という厳しい局面に直面している。