自動車保険の保険金不正請求問題で中古車販売大手「ビッグモーター」が大炎上している。創業家が社長・副社長を辞任し、「新体制」になったことで幕引きを図ろうとしているが、父子の影響力は消えるどころか──。
【写真】約3mの外壁やシャッター付き車庫、奥にそびえる家も総石張り…ビッグモーター・兼重宏行前社長宅(ボカし処理あり)。他、別アングルや、巨大な幹線道路沿いの店舗も
ビッグモーターで不正が横行するようになった背景には、過剰なノルマや異常な降格人事があったという。「コストカッター」としてそれらを主導したのは、兼重宏行・社長(71、7月26日付で辞任)の息子・宏一副社長(35、同日付で辞任)だと指摘されている。同社の問題を長く取材してきた自動車生活ジャーナリストの加藤久美子氏はこう語る。
「宏一氏は早稲田大学を卒業し、海外でMBAを取得するなど極めて優秀な経歴の持ち主で、工業高校卒の父からすれば、そんな息子に自身が立ち上げた会社を引き継いでほしいという思いが強かったと思います。
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ただ、周辺の人に宏一氏について聞くと『優秀だけど所詮お坊ちゃん』『世間知らずで一般の人たちの痛みがわからない』といった話ばかり聞こえてきます。クルーザーに乗ったり、大好きなゴルフ三昧だったりして社内での人望はあまり得られないところはあったのでしょう。
宏一氏と違って父の兼重前社長は強いリーダーシップを行使してきた経営者ですが、社員や少なくとも幹部からの人望は厚かった。息子に会社を任せていたこの間は経営にはほとんど口を出していなかったようです」
同社ではLINEが活用されていたが、コミュニケーション能力が不安視されていたという宏一氏はもっぱらそのLINEを通じて社員とコミュニケーションを取っていた。
「社内にはたくさんのLINEグループがあり、役員やエリア長ごとのグループ、6000人の全社グループもあり、人事などもそこで告知します。宏一氏も直接やり取りすればいいようなこともLINEで済ませてしまう。営業幹部を叱責するのも、パワハラまがいの罵倒も平気でLINEでする。『環境整備点検』と称して全店を回ることがありますが、宏一氏は従業員の挨拶や髪の色が気に食わないと『明日から来なくていい』と通告することもありました。
同社は『売上高1兆円』を目指しており、宏一氏はまだ経験もスキルも不足する若い経営者として、父を超えなければならないという使命感から無理をしていた部分もあったのでしょう」(加藤氏)
※週刊ポスト2023年8月11日号