政府の大号令で進むマイナンバーカード制度だが、人為的ミスやシステムエラーによる落とし穴が次々に発覚。堪忍袋の緒が切れた国民がついに動き出した。
何ができるようになる? 「マイナンバーカード保険証利用」で簡単・便利になること
〈マイナカードを返納してきました! 返納理由は不祥事多数、今後の運用の不審〉
〈マイナンバーカードは作らない! 使わない! 従わない! マイナンバーカード返納が国民の意志表示!〉
最近、SNSに〈#マイナカード返納運動〉〈#マイナカードの廃止を求めます〉などのタグを付けた投稿が散見される。なかには返納届の理由欄に〈河野太郎の不誠実〉と記載した様子をアップした人もいる。
ここで、国民の怒りを買った政府による一連の失態を振り返ってみよう。
「国民の皆様に不安を与えていることは申し訳なく思います」
6月5日、マイナカードをめぐるトラブルの続出について、河野太郎デジタル担当相が謝罪した。
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6月4日時点で人口に対する申請率が約77.1%に達したマイナカードだが、各地で不祥事が続出。厚労省の集計では、マイナカードと健康保険証が一体化した「マイナ保険証」において、別人の情報が紐づけられていたケースが2021年10月から2022年11月の間に7312件も確認された。
マイナカードを用いて各種証明書を取得するサービスでも、別人の住民票が発行されるトラブルが今年3月以降、全国で25件。本来は本人名義の口座でなければならない「公金受取口座」に家族名義の口座が登録されるケースも13万件確認され、岐阜県各務原市では80代の男性が取得したマイナカードに他人の写真が印刷されるミスが発覚した。
相次ぐトラブルに国民は憂う。JNNの世論調査では72%がマイナンバーの活用に不安を感じると回答した。
「キャンペーンに力を入れ、トラブルを想定していなかった」
トラブル多発の大きな要因は政府が拙速に導入を進めたことだ。自治体情報政策研究所代表の黒田充氏が指摘する。
「マイナカードを保険証として利用した際に他人の情報が表示されるのは、健保組合などがマイナンバーと被保険者番号の紐付けを間違ったためです。国はマイナカードの普及を急ぐあまり“マイナポイント2万円分配布”といったキャンペーンに力を入れ、トラブルを想定していなかった。人間が関わっているのですからミスが出るのは当たり前です」
この先、政府は紙やプラスチックの健康保険証を原則廃止し、2024年秋までにマイナ保険証への一本化を目指す。その際、さらにトラブルが増加すると黒田氏が語る。
「マイナンバーに紐付けられた被保険者番号は転居や転職などで変わり、その都度マイナンバーと被保険者番号の紐付けを修正する必要がある。ミスは今後も出るでしょう」
懸念されるのは、さらに重大なトラブルが発生する恐れがあることだ。黒田氏は「カルテの取り違え」を不安視する。
「マイナカードを保険証として使うと、医療機関は患者の投薬情報や特定健診情報などを確認できますが、国は今後、閲覧可能な医療情報を増やす計画です。マイナンバーと被保険者番号の紐付けを間違うと、カルテが他人のものと取り違えられ、それに基づいて医師が診察や投薬をすることになる。最悪の場合は命に関わります。このリスクがあるため、多くの医師がマイナカードと保険証の一本化に反対しています」
実際、4月には全国の医師1075人が「マイナ保険証の義務化阻止」を掲げて国を提訴した。
※週刊ポスト2023年6月23日号