鹿児島県枕崎市で外国人技能実習生を受け入れる事業者を指導・監査する監理団体が、団体の施設に実習生を住まわせる際に十分な居住スペースを確保していないなど、複数の点で国の運用要領に違反しているとみられることが分かった。体調不良を訴える実習生に服を脱いで患部を見せるよう求めるなど人権侵害が疑われる行為も発覚。厚生労働省所管の外国人技能実習機構も監理団体から事情を聴くなど実態把握に乗り出した。
▶「涙も出なかった」屈辱の扱い【実習生2人の証言】
▶外国人頼みの枕崎かつお節生産
20年前から受け入れ仲介
監理団体は「枕崎市水産物振興協同組合」。かつお節などを生産する地元事業者に対し、約20年前から中国やフィリピン、インドネシアからの実習生の受け入れを仲介。地元事業者の組合事務所と同じ敷地内に団体の建物があり、1階が事務所、2階が実習生の寮として使われ、現在、女性約60人が共同生活をしている。
関係者によると、2階には2段ベッドが8台並んだ部屋が四つあり、各部屋で最大16人が居住。カーテンで仕切られた個人のスペースはベッド1台分に限られ、「寝室は1人当たり4・5平方メートル以上」とする国の運用要領を満たしていない。他にも窓を自在に開閉できない、就寝時間が異なる実習生が同じ部屋で生活-などが要領違反に当たるとみられる。
空調機の使用制限も
空調機の使用の制限や、契約時に朝だった始業が未明に変更されるなど厳しい条件に耐えかねて寮から逃げ出した実習生が複数いる。うち1人は痔核(じかく)ができて医療機関の受診を希望した際、団体職員から患部を見せるよう求められた。
実習生を保護する巽(たつみ)昌章弁護士(大阪弁護士会)は「彼女たちの生活環境は国の要領に反する。痔核を見せるよう強要したのは人権侵害だ」と指摘する。技能実習機構が法令違反などを確認した場合、改善命令や許可取り消しの対象となる。
監理団体代表の説明は
監理団体の代表は西日本新聞の取材に対し、寮には食堂や廊下など共用スペースがあるとし「建物全体で見れば個人(が使える)スペースは運用要領を上回る」と説明。患部を見せるよう求めたことについては「実習生は日本語で症状をうまく説明できなかった。健康管理のため、確認が必要だった」と答えた。
(長田健吾、内田完爾)