救急車は無料であるべき?搬送コストと適正利用めぐる現実と課題

救急車の利用が急増し続ける中、軽症患者への対応や財政負担の問題から一部地域で実質的な有料化が進んでおり、賛否を呼んでいます。

ざっくりPOINT
軽症搬送への費用負担を一部地域で導入
「呼び控え」による重症化懸念も
日本救急医学会などが有料化議論を提唱

救急車で病院に運ばれる人が増えています。昨年は全国で過去最多の676万人でした。しかし、その約半数が軽症で、通報も緊急を要しない内容が目立ちます。搬送先の病院が軽症者に費用負担を求める動きも出ています。実質的な救急搬送の有料化ですが、皆さんは認めますか?

https://news.yahoo.co.jp/articles/943c8544d0e442f17c395e19186220e5e74a6519

世界各国の救急車制度と日本の特異性
世界の多くの国では、救急搬送は無料ではありません。

例えばアメリカでは、搬送ごとに数万円から十数万円の請求がなされ、保険の有無によって自己負担額が大きく異なります。

一方で、フランスやドイツでは公的医療保険が費用をカバーし、イギリスでは基本的に無料となっています。

これらの国々に共通するのは、搬送要請にトリアージ(優先順位の判断)が介在する点で、日本のように要請があれば無条件で出動する仕組みはむしろ例外です。

日本は高度な医療サービスを手厚く提供する一方で、財源負担が重く、持続可能性が問われ始めています。

救急車の役割と位置付けを見直す必要がある時期に差しかかっています。

救急車の「公共性」と「持続可能性」の両立へ
救急車の無料利用は、緊急時に誰もが平等に医療を受けられるという理念を支えてきました。

しかし、救急搬送の濫用や過剰利用が常態化しつつある現状では、制度の持続性が問われます。

無料だからこそ気軽に呼ぶ人が増える一方で、本当に命に関わる事態に対応が遅れるリスクも生じています。

救急医療の公共性は重要ですが、利用にあたっての教育や予防策、相談体制の整備、軽症者の他手段の確保など、多面的な取り組みが求められます。

単なる有料化ではなく、「誰に」「どんなケースで」「どれだけの負担を」求めるかという丁寧な議論が不可欠です。

今後は全国的な制度設計に向けて、国レベルの方針が注目されます。