就活で「学歴フィルター」がなくなり経験重視になれば“もっと悲惨なこと”になる

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就職活動では大学名などでふるいを掛ける「学歴フィルター」があるといわれている。その存在を公言する企業はないものの、毎年のように学歴フィルターが話題となり、書類選考の段階で“門前払い”されることに不満を抱く就活生もいるようだ。では、学歴フィルターがなくなれば、よりフェアな採用が実現するのだろうか。近著が話題の、元少年院教官という異色の経歴を持つVTuber「犯罪学教室のかなえ先生」が、実際の相談に回答する形で、学歴フィルターとの向き合い方について解説する。

【画像】相談に回答してくれたのは、日本初の元国家公務員の男性VTuber「犯罪学教室のかなえ先生」

【お悩み】なぜ採用には「学歴フィルター」がある? もっと学生の内面を見てほしい!

就活生です。学歴フィルターに悩んでいます。教育にお金をかけることができる家庭の割合の多い上位大学生が、就活でも有利な状況に不満があります。私は大学に入ってから将来のために資格などもたくさん取得しました。しかし大学に入るまでの経歴を重視される結果、上位の大学卒業者が多い企業に応募すると書類選考で落とされてしまいます。人生経験やその人の内面を重視する選考方法にならないのはどうしてでしょうか?

【回答】学歴は“品質証明書”。経験重視になると就活はもっと悲惨になる

うわー、めっちゃわかるわー……おっと、つい心の声が出てしまいました。

さて、回答する前にまずは「学歴フィルター」の説明をしなければなりませんね。これは、企業が採用希望者の選考活動において非公式に設けている、卒業予定の大学名や学歴だけで就活生をふるいにかけるシステムのことを言います。

一応、非公式なものですから、一般に採用側の企業は認めていませんけども、足切り基準を満たした学歴(本当は学校歴が正しい表現です)がないと、企業の採用説明会を予約しようとしても常に満席と表示されて参加できないということが実際にありました。

これって、すごく不公平に感じますよね? 皆さんはどう思われますか? もしかしたら、学歴フィルターを感じたことがある人もいるかもしれませんね。

ここで少し考えてみましょう。

なぜ、就職活動において、学校歴や学歴が重視されるのでしょうか? 採用する側の企業はどのような人材を求めているかという視点で考えます。単純に突き詰めると、採用後会社に利益をもたらす可能性の高い人間だと言えそうですね。

このような意図で採用選考が行われる場合、学歴は「その人が大学に入るまでにどれくらい努力をしてきたか・努力できる人だったのか」が一目でわかるその人の品質証明書として機能すると思いませんか?

もちろん、学歴だけでその人が本当に優秀かなんてわかりません。しかし、「学歴を手にするまでの努力と望ましい結果を出すことができる人間である」と仮の人物評価を置くことはできそうです。そういう意味で「学歴フィルター」は、採用する側の選考にかかるコスト(時間や労力など)削減に寄与するシステムだと言えます。

もしも、これで足切りを設けないでいると、どうなるでしょうか?

皆が憧れる大企業だと何千、何万人と応募者が集まってしまい、今度は採用側の負担が大幅に増えて、丁寧な選考が難しくなってしまいます。利益をもたらす優秀な人材を獲得するための採用活動なのに、就活生の見極めにコストがかかりすぎるのは本末転倒です。

ちなみに、『就職白書2020年』によると、2020年新卒採用における1人あたりの平均採用コストは約94万円でした。採用する側も非常にお金をかけていることがわかります。

ここでもう一度相談内容に目を移してみましょう。もしも、「学歴ではなく経験などを重視するべきだ!」と社会が変わってしまうと、どうなるのか?

私がもし経済的に豊かな家庭で子どもを育てているならば、幼少期から海外に留学させたり、休日はボランティア活動に連れていくなど、持てる資本をフルに活かして子どもに様々な経験をさせてあげると思います。

大学に入学することができたら、親(自分)のお金でNPO法人を設立させ活動させてみたり、有名企業役員とバンバン会食させてコネを作らせてあげると思います。

これは、家庭にお金があるからできることです。

一方、経済的に苦しい家庭環境の場合はどうなるでしょうか? おそらく貧困家庭出身者が、親の課金で経験値武装した上流階級出身者たちにオーバーキルされる光景があちこちでみられるようになるでしょう。

これは冗談や空想の仮定の話ではありません。実際にアメリカの大学入試の現場などで起こっていることで、子どもにお金をかけることのできる富裕層の子どもほど入学が有利になっています(ぜひ調べてみて欲しい!)。

この現実を知ると、実は日本の学歴重視選考はまだマシな選考方法と言えます。

学歴フィルターはクソゲー特有のバグではなく、育ちの資力がなくとも学歴を獲得できれば生活環境を好転させるチャンスを得られるという優しい仕様なのです。

もちろん何度も話している通り、幼少から教育にお金をかけることができる家が有利なのは間違いありませんが、推薦入試やAO入試、スポーツ特待生選抜など、学歴獲得の手段も多様化し、さらに無料で視聴できるYouTubeにも受験情報がたくさん投稿されるようになりました。見えないところに人生逆転のチャンスは数多く転がっています。

あとはやるかやらないかの話です。

大学時代の資格取得の話も、これまでの人生の積み重ねが土台にあって評価されます。相談してくれたアナタは不満に思うかもしれませんが、他の人よりも高いハードルがあることをまず受け入れた上で、どうすれば越えられそうか考えてみて欲しいです。

行動を起こしましょう。そうすれば、アナタの望みが叶う可能性はグッと高まります。なんだか自己啓発本みたいで嫌ですね(笑)。

【プロフィール】

犯罪学教室のかなえ先生/元・法務教官(少年院の先生)で、日本初の元国家公務員の男性VTuber。2020年9月よりスタートしたYouTubeチャンネル『犯罪学教室のかなえ先生 V Criminologist』を運営。同配信には視聴からの悩みが多く寄せられ、それらに対する“愛のある辛口コメント”にも定評がある。経済産業省「未来の教室」プロジェクトのSTEAMライブラリーに学術系VTuberユニット「まなぶい」のメンバーとして教育コンテンツを提供するなど活躍の場を広げている。

※犯罪学教室のかなえ先生・著『人生がクソゲーだと思ったら読む本~生きづらい世の中の突破術』を元に構成

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