真実を知ると無邪気な笑顔が泣けてくる…

現在、世界中で反響を呼んでいる、シリア北西部イドリブ県に暮らす父と娘の動画。楽しそうに笑い声を上げる3歳の女の子とお父さんの姿が微笑ましい、一見ほのぼのとした印象の動画です。 (英語字幕のみ)

心から楽しそうに笑う女の子。幸せそうな親子そのものです。
しかし…動画の字幕に注目すると激しい違和感を覚えます。

お父さん: 「今度は戦闘機かな?それとも爆弾かな?」
女の子: 「爆弾よ」

お父さん: 「爆弾?」
女の子: 「そう。爆発したら笑うんだよ」

そして爆発音が鳴り響くと…

無邪気な笑い声を上げる女の子。心から楽しそうです。

二人が暮らすのは、内戦が続くシリアの中で現在最も激しい戦闘が繰り広げられているイドリブ県。もし自宅に爆弾が投下されれば命の保証はありません。それなのになぜ空爆に怯えることなく笑うのでしょうか?

実は女の子は爆音が楽しいゲームの一つだと思っているのです。「爆弾の音がしたら笑うゲーム」幼い娘が空爆の爆音で怖がることのないよう、父親のアブドラ・ムハンマドが考え出した苦肉の策だったのです。

命を脅かす空爆の最中、絶望と恐怖を押さえ娘の前で気丈に振る舞う父と、父の「ゲーム」を心から楽しむ女の子。娘を思う父親の心情と、父親の優しい嘘を信じる娘…背景を知ると、胸が押し潰されそうになります。

2011年3月15日に勃発したシリア内戦からまもなく9年目を迎える現在。

シリア人権監視団の発表によれば内戦による死者数はすでに38万人を超え、そのうちの11万5000人が民間人言われています。これまでに1300万人近くの国民が避難や亡命を余儀なくされており、内戦の収束への道のりは未だに厳しい状況です。

数日前の報道によれば、内戦は最終的な攻防の局面に突入。反体制派の最後の大きな拠点であるイドリブ県でアサド政権軍と反体制派を支援するトルコ軍が相次ぎ武力衝突。内戦突入以来、最大規模の交戦に発展しています。

内戦の激化によりシリア北西部では2019年末以降、60万人が家を失いました。砲撃や空爆の恐怖や不安に日常的にさらされて育つ子供達はトラウマと極度の心理的ストレスにより、精神面で問題を抱えていると報告されています。

内戦によるダメージから幼い娘の心を必死に守ろうとする父親の想いが伝わる動画です。
どうか親子が今後も無事でありますように。そして1日も早く内戦が収束し、平和が訪れるよう、親子が穏やかな日常の中で心から安心して笑うことができるよう祈らずにはいられません。